漫画薬屋のひとりごと第3巻ネタバレあらすじ
第10話 蜂蜜
妃たちは互いの宮を行き来してお茶会という名の情報交換会をしていたりする。
玉葉妃はほがらかな人柄から、特に人の出入りが多い。
そんなお茶会で余ったお菓子を猫猫は小蘭へ分けたりしていると、阿多妃の噂を聞く。
四夫人の中でも高齢の阿多妃。上級妃の位から下げて新しく輿入れする妃を上級妃にしようとしている話があるらしい。
東宮妃時代に一度男の子を生まれたものの亡くなってしまったーー
後宮の花は実を結ばなければ意味がない。
そんななか、玉葉妃のもとへ里樹妃がお茶会に訪れる。
侍女たちも気合をいれて着替えて飾り付けをする。
甘いものが好きな里樹妃に、玉葉妃はお気に入りの柑橘の皮の蜂蜜煮を勧める。
浮かない顔を察知した猫猫は玉葉妃にこっそりと進言し、蜂蜜煮を取りやめて生姜湯でもてなすと里樹妃は安堵の表情に。
例の毒見役は相変わらずで、里樹妃が蜂蜜嫌いなのを知っていて黙っていたようだと猫猫は確信する。
お茶会終了後に現れた壬氏をみて、猫猫はうげ…とした表情とともに今回の急なお茶会はこいつの差し金かと思う。
例の自殺した下女が里樹妃暗殺未遂に関わっていたことが、下女の遺書に書かれていて分かったのだという壬氏。
なぜ下女が里樹妃を狙うのか?
毒はどこから?
と思案する猫猫を見つめてニコッとする壬氏に、面倒な予感しかせずに不機嫌顔になる猫猫。
予感は的中、猫猫は阿多妃の柘榴宮に手伝いに行かされることになる。
柘榴宮の年末の大掃除のお手伝いに駆り出された猫猫。
阿多妃の姿を目の当たりにし、官服を着れば若い文官と見間違うかもしれない凛々しい美しさと魅力、女官のあこがれの的となっただろうかと考える。
柘榴宮の侍女頭・風明(フォンミン)の指示のもと働くが、風明の腕には怪我をしていると思しき包帯が。
侍女たちはよく働くが筆頭で働いているのは風明。侍女はそのようなことをさせるのはと風明から掃除の仕事を引き受けようとするが、逆に自分の仕事をするようにと侍女を気遣う。
そんな様子をみながらも、猫猫はなぜ自分が柘榴宮の手伝いを命令されたのかを考える。
この中に、里樹妃暗殺未遂に関わった者がいる、と悟った。
高順は壬氏に、なぜ猫猫に何も伝えないまま柘榴宮に行かせたのかを問う。
壬氏は必要ない、気付いているだろうと話す。
壬氏の推測では、柘榴宮の侍女たちは忠誠心の強さから、四夫人から阿多妃が下ろされようとしているのであれば他の妃の座が空けば主人を守れると考えてもおかしくないというもの。目ざとい猫猫に何かしら嗅ぎつけてくれたらと願っていた。
猫猫は柘榴宮で風明の部屋を訪れていた。
ちょうど包帯を巻き直していた風明の腕をみると、火傷をしているようだった。
頼まれて風明の部屋にツボを運んできた猫猫は、棚の上に多くのツボー蜂蜜があることに気づく。風明の話では、実家が養蜂をしていていろいろ取り寄せているので種類も豊富にあるのだという。
蜂蜜…つい最近も気になることがあったような。
偶然かもしれないがなぜ里樹妃は蜂蜜が苦手なのか?
猫猫は壬氏の元にもどり、特段報告するようなことはなかったと告げる。
ただの薬屋にスパイのような真似をさせないでほしいと思いながら、猫猫は壬氏が最近きらきらしいのが減った気がするように感じていた。
壬氏は24歳ときいたがともすると少年のような……と思っていると、例の炎の色が変わる木簡を使っていた可能性のある人物はいたか?と壬氏にたずれられた猫猫。
あくまで可能性として侍女頭の風明を挙げる。
失礼しようとする猫猫を呼び止める壬氏。
壬子「いい子には、ご褒美をあげないとね。」(にこっ)
猫猫(ぞわわ…)
遠慮する猫猫に、蜂蜜を手にしてにじりよる壬氏。
壁まで追い詰められた猫猫は、蜂蜜を指につけた壬氏 に対して心の中で叫ぶ。
(何をさせようってんだ、この変態ーーー!!?)
第11話 侍女頭の秘密
通路を歩く高順と猫猫。
高順「壬氏さまも悪戯が過ぎただけですので、許してあげてはいかがでしょうか?」
猫猫「わかりました。では、」
猫猫「次は高順さまが舐って(ねぶって)ください。」
たじろぐ高順にぷいっとし、あの変態(壬氏)がしたことにムカムカしている猫猫。
指に蜂蜜をつけた壬氏に、壁まで追い詰められた猫猫。
壬氏「甘いものは嫌いか?」
猫猫「私は辛党なので。」
壬氏「でも食べられるだろう?」
壬氏の指に付いたとろっとした蜂蜜を猫猫の前に差し出し
壬氏「ーーさあ。」
命令と割り切るか、尊厳のために逃げ出すか、ピンチの猫猫は高順に助けを求める視線を送ると高順は目をそらした!
猫猫(く……今度下剤盛ってやる!)
高順(ビク!)
壬氏は魅惑的に猫猫の口元まで蜂蜜のついた指を近づける
猫猫(せめてこれが鳥兜(とりかぶと)の蜜なら舐めるのに…!鳥兜の蜜なら毒がーー)
猫猫「ーーあ。」
壬氏「……あ?」
「壬氏さま。」
玉葉妃「うちの侍女に 何をしているの?」(怒
後ろには呆れた紅娘の姿もーー
高順はひたすら猫猫に反省しまくる。
そんな2人が行き着いた先は金剛宮ーー里樹妃のもとだった。
猫猫は里樹妃に確認をした。
蜂蜜が嫌いであること。
なぜ蜂蜜が嫌いであるのか。
里樹妃は覚えていないものの、赤子のころに蜂蜜を食べて生死の境をさまよった話を乳母や侍女からずっと聞かされていたために怖くて今でも食べられないのだという。
普段は味方のふりをして他所は敵ばかりと教え孤立させて恥をかかせている侍女たちと、いじめられている自覚のなく騙されている世間知らずなお嬢様ーーという構図を見抜きながらも、蜂蜜の話を柘榴宮の侍女頭にしたかどうかを里樹妃に尋ねると、どうしてそれを知っているのかという反応を示した。
猫猫はやっぱり、と確信する。
戻った直後、高順にお願いをして書庫から後宮の記録を取り寄せた猫猫。
17年前、主上の東宮時代に阿多妃は子を授かり、同時期に皇弟も生まれていた。
妃の産んだ男児は乳幼児のうちに死亡。
立ち会った医官は男児を死なせた罪で追放されていた。その医官は猫猫の養父(おやじ)だった。
翌日、
玉葉妃からの文を持って柘榴宮を訪れた猫猫。
対応した風明に文箱の中身を見せつける。
蜂蜜の壺とツツジの花、そして「有毒」と書かれた紙切れ。
顔色を変える風明に、猫猫は話があると切り出す。
風明の部屋で、年が明けたら柘榴宮は新しい妃の宮になると聞かされた猫猫。
猫猫「阿多妃はもう子は産めないのですね?」
出産の時に何があったのかを聞き出そうと風明に、出産に立ち会った医者は養父の羅門(ルォメン)であると告げると当時のことを憎々しげに語る。
阿多妃の出産に立ち会っていた最中、皇后も産気づきすぐに皇后のもとに参れと命令が下る。まだお産中であることを告げても皇后さま優先とされて羅門は行かざるを得なかったーー
でも対応が遅れたせいで阿多妃は子宮を失ってしまった。
挙げ句に無事に生まれた男児まで。
あの医官が対処していればこんなことにはと言う風明に、猫猫は疑問を呈す。
産後の肥立ちが悪かった阿多妃に代わって生まれた子の世話をしていたのは風明だったのでは?
養父なら当時鉛白入りの白粉を禁じていたはず。風明ももちろん守っていたはず。
養蜂家で育った風明は花の中に毒をもつものがあるのも知っていたが、赤子のみに効く毒がただの蜂蜜に混ざっていることは知らなかったーー滋養に良いからと毒見して与えた蜂蜜が赤子を死なせるとは思ってなかったはずーー
その真実を阿多妃に知られたくなかったが、里樹妃から蜂蜜の毒のことを聞くかもしれないーーだから殺そうとした。
里樹妃は阿多妃と仲がよく、先帝がまだ幼い里樹のもとへ通わぬよう守っていたのが阿多妃だったという。
風明「あんな侍女にすら馬鹿にされている世間知らずの小娘のために」
この言葉から猫猫は、園遊会で見た柘榴宮と金剛宮の口論を思い出す。
あれは金剛宮の侍女たちの仕打ちを、柘榴宮の侍女たちが諌めていたもの。
柘榴宮の者はみんな里樹妃の立場に気付いていたーー。
木簡を燃やした炎色は、毒を入手するために外部の者とひそかにやりとりしたため。
毒殺が未遂に終わるとその罪を下女に着せ自殺にみせかけて殺した。
纏足の下女がはしごもなく登れるわけがない、はしごは誰かがはずしたからーー
推理をいいながらも猫猫はあたりの様子を気遣う。
かんざし、包丁、があるーー
風明「それでーー欲しいものは何?」
不気味に風明が尋ねた。
第12話 阿多妃
望みを言ってみなさい、という風明に、そんなことは意味がないという猫猫。
風明「一番大切な人の一番大切なものって、何かわかる?」
子を無くした当時、阿多妃は「子は天命に従っただけ。誰のせいでもない。」と語った。
夜一人で泣いていたことを知っていたのに、本当のことを言えなかった。
それから秘密を守ってきた。
でも蜂蜜が赤子に毒と知る里樹妃がいる。
先帝が崩御して出家した時にはほっとしたのに、戻ってきて、同じ上級妃として阿多妃を追いやる立場なのに変わらずに母親を求めるように慕ってきたから殺すことにーー
下女は罪を着せて殺したのではなく、下女は自ら死を選んでいた。
風明が里樹妃の毒殺に失敗した直後に命を絶とうとしていたところ下女に見つかった。
このままでは阿多妃に疑いがかかりかねないーー
下女「でしたら、私が変わりに死にます。」
自分はただの下女だから罪を負っても他に累が及ぶことはないけれども風明は侍女頭。結局阿多妃に及ぶことだってありうる。だから私が死にます、という下女。
なぜそこまで?と問うと、阿多妃に声をかけていただいたことがあったという。「いつもありがとう珊児」私のような下女の名前まで覚えていて優しくしてくださった…そんな阿多妃を守れるのであれば、という。
ただ、文字が書けないのと一人だと怖くて死ねそうにないので手伝ってほしい、と風明にお願いをした。
阿多妃のためなら命を投げ出すーー
そんな阿多妃の大事なものを奪ってしまった。
そして下女・珊児の死も無駄にしてしまったーー
むせびなく風明を前に猫猫はさまざまなことを思い、養父の「陽の下に晒さないほうがいいんだよ」という言葉が頭をかすめる。
17年前の赤子の死因を暴いたところで傷つく人が増えるだけ。
猫猫は風明に、結末は変わらないものの、一つの提案をする。
柘榴宮から戻った猫猫は服の下に巻いていた油紙と布をほどく。
万が一の防御として身につけていた。
猫猫(必要なくて良かった。刺されたら痛いもんな。)
翌日、壬氏が猫猫の前に現れる。
柘榴宮の風明が里樹妃暗殺未遂の黒幕と自白したのだという。
何か知っているか薬屋?と聞かれ、いつもの不機嫌そうな顔で「なんで私が?」と切り返す。
動機は阿多妃の四夫人としての地位を守ること、その一点に尽きるとのことだという。
猫猫「本人がそうと言っているならそうなのでしょう。」
猫猫の提案でそう主張してそれ以上は晒すことはないと助言したのだった。
壬氏はまだ何かを隠してそうな…と思いつつも、猫猫へ阿多妃が年明けに南の離宮へ移ることになったと知らせる。今回の件が原因ではなく前々から決まっていたことのようだ。
離宮に住まわせることに主上なりの愛情を感じていた猫猫は花瓶にいっぱいのツツジに目を留めた。
蜜を吸おうとすると壬氏が近寄る…が、すす…と離れてツツジを勧める猫猫。
壬氏「……甘いな。」
猫猫「毒ですけどね。」
壬氏「ぶっ!!」
オロオロする壬氏に、死ぬことはないので大丈夫と教える猫猫。
四夫人の侍女頭が投獄される大事件に揺れながら、年は明け、いよいよ阿多妃が後宮を去る日が明日に迫った夜。
目が冴えて眠れない猫猫は城壁の上に登り外の街を眺める
すると塀の上を歩いている阿多妃と出会う。
男のような出で立ちに、肩にはひょうたんを引っさげている。
塀の上でひょうたんに入ったお酒で、阿多妃に一杯付き合う猫猫。
阿多妃「息子が私のもとからいなくなってから、ずっと私は主上の友人だった」
妃の座にすがらなければきっと…と語る阿多妃の横顔を、猫猫はよく似た顔を知っている気がすると思う。
阿多妃は城壁の上から外の堀に酒を垂らす。
阿多妃「水の中は寒かっただろうな。…苦しかっただろうな」
猫猫「……ええ。」
阿多妃「莫迦(ばか)だ。みんな、莫迦だーー」
猫猫は阿多妃は人の上に立つべき人だ…もったいない、
違う形で主上のそばにつかえていれば、為政を支える柱になり得たかもしれないーーと思った。
阿多妃は去り、城壁の上に長居してしまった猫猫は塀を降りようとしているところを何者かに見つかり、思わず足を踏み外して落下してしまうーーが、何者かは壬氏で、落ちたのは壬氏の上だった。
すぐにどこうとする猫猫の背中を壬氏はしがみつくように抱きしめる。
壬氏は酔っているようだ。
壬氏「相手は俺に酒を飲ませるだけ飲ませて、どこかへふらりと出かけたあげく、戻ったらすっきりしたから帰れと追い出された」
猫猫「と、とにかく放してください。」
壬氏「寒いからやだ。」
猫猫は壬氏が下敷きにしてしまったことを怒っていると思い謝りながらもどこうとするが、
壬氏「少しだけだ。」
涙があった。
壬氏「もう少し。もう少しだけ温めてくれ……」
ふう、とため息をついた猫猫。
わかりました。少しだけですよ?
そう言って星空を見上げた。
第13話 解雇
阿多妃は晴れ晴れとした顔を上げて堂々と胸を張っていた。
後宮を去る日。
ため息をついたり泣きそうな侍女たち。
女ばかりの後宮では凛々しい文官のような阿多妃は偶像だったであろう。
壬氏と対面している阿多妃の姿を見て、2人が似ていることに気づく猫猫。
もし阿多妃が壬氏のような立場だったら…せめて御子が生きていたら……と思う猫猫の脳裏にかすめたのは、昨日の阿多妃の言葉。
「息子は私のもとからいなくなってからーー」
死んでから……ではなく?
17年前、同時期に生まれた赤子。
阿多妃は出産のときに思い知ったはず。
何かあったときには東宮の子より皇帝の子のほうが優先されるーー。
まさか、御子を入れ替えた?
養父が追放されるだけでなく肉刑(膝の骨を抜かれる)を受けたのは、赤子のすり替えに気づかず、挙げ句に本当の皇帝の子を死なせたから???
妄想が過ぎたと頭をふっていると、阿多妃の元へ里樹妃が駆けつける。
近付こうとして転んだ里樹妃をやさしく起こし、ボロボロの泣き顔から涙を拭いてあげた。
子を手放した阿多妃
幼くして親元から離された里樹妃
親子のような絆があったのだろうーー
その後、壬氏は頭を抱えていたーー。
風明の人脈から関係のある者が後宮にいる2000人中80人ーー。
あいつはどう思っているだろう?
このまま後宮勤めを望んでいるのか?
命令すれば残るだろうが隠蔽工作をしてこちらの望みを通したと知ったら、あいつはどんな顔をするかな……
高順「都合のいい駒ではなかったのですか?」
その目線の先には名簿と思しきものに「翡翠宮 猫猫」の名前があったーー。
大量解雇。
風明の件で関係者は一斉に解雇されるという噂を小蘭から聞いた猫猫。
猫猫は人さらいどもが猫猫の縁者ということになっていて、そいつらの素性がよく分からないので解雇される可能性がーーというか今ココで解雇されたら、猫猫を妓女にしようと老鴇(やり手ババア)が待ち構えている花街に戻るしかない……。
李白の際の分も清算が済んでいないし、絶対に売り飛ばされる!と頭を抱える猫猫。
いてもたってもいられず、壬氏のもとへ確認しに行くとーー
解雇される名簿のなかに猫猫の名前があった。
猫猫の実家は貿易商ということになっていて、風明の実家とも取引していたようだ。
猫猫「つまり……解雇というわけですね。」
壬氏「そうなるな。」
壬氏「お前はどうしたい?」
猫猫「私は、ただの侍女です。ご命令のままにーー」
(下働きでもまかないでもなんでもやるから残してくれ……!)
壬氏「それは……どちらであっても異論はなしということか。」
猫猫「……はい。」
壬氏「……」
壬氏「わかった。金ははずもう。」
……猫猫は解雇。
猫猫が後宮を出て1週間。
玉葉妃に「ひどい顔」と言われた壬氏は「薬屋は関係ありません」と言いながら、げっそり。ヨロヨロである。
紅娘「後悔するくらなら引き止めれば良かったのに」(ひそひそ)
高順「言わないでください……あんな壬氏さまを見るのは何年ぶりかーー」
小さいころに新しいおもちゃを差し出した時のことを思い出している高順。
当時の壬氏は「あれじゃなきゃ、やだ」とスネていた。
玩具なら気に入るまで新しいものを用意すれば良かった。
玩具以上の存在だからこそ猫猫を手放されたのだろう。
高順は代替が無理なら本物を用意するしか、李白なら猫猫の実家について知っているかもしれないと手を回し始める。
妓楼では大掛かりな宴の準備がされようとしていた。
猫猫も着替えて化粧をすることに。
李白が三美姫まとめて屋敷に招いての宴なのだという。
猫猫が連れてきた武官の紹介なので猫猫が行かなくてどうするんだい、というのがやり手ババアの考えである。
その夜、盛大な宴が行われ、猫猫もお酌をして回るしかなかった。
絢爛豪華な宴中だってのに、暗っ!
という男がいて、猫猫はお酌をしにいくが「独りにしてくれ」と断られる。
辛気臭い奴と思ったものの、俯いているせいで顔を隠している髪をそっとかき分けてみると
猫猫「壬氏さま?」
壬氏「お前……誰だ?」
猫猫「よく言われます」
壬氏「化粧で化けるって言われないか?」
猫猫「……よく言われます。」(こんなやり取り、前もあったな……)
猫猫「失礼しました。」
壬氏「待て。何故そんな格好を?」
猫猫「短期就労中(アルバイト)でして。」
壬氏「妓楼でか!?」
猫猫「…まだ個人で客は取ってませんよ?」
壬氏「………」(まだ……)
壬氏「……俺が買ってやろうか?」
猫猫「ーーー」
猫猫「ーーー」
猫猫「いいかもしれませんね」
壬氏「!?」
猫猫「もう一度後宮勤めも悪くないです。」
お前は嫌で出ていったんじゃないのか?と問う壬氏に、そんなことは言っていない、私は残りたかったのに解雇にしたのは壬氏でしょう?と言い返す。
猫猫「不満があるとすれば毒実験ができないことくらいでーー」
壬氏「それはさすがにやめろ。」
そうだよな、お前はそういう奴だよなと頭をかく壬氏は、猫猫に顎クイ。
猫猫「妓女に触れないで頂けますか?」
押し問答の末に
壬氏「指先だけだ」
猫猫(しつこい!そういえばこういう奴だった)
猫猫(でもなんだか、今日のこいつはーー)
猫猫「指先だけですよ?」(うぅ……)
壬氏が人差し指で触れたのは猫猫の下唇。
指についた猫猫の紅を、自分の下唇にそっと塗って微笑んだ。
猫猫(なんだよ、そんなこどもっぽい笑顔ーーうつるじゃないか。)
数日後ーー
花街に麗しい貴人が現れる。
婆さんも目がくらむような金子と、なぜか虫から生えた奇妙な草をもったその貴人は、一人の娘を所望した。
貴人は壬氏。
娘は猫猫。
猫猫は壬氏に嬉しそうに駆け寄った……冬虫夏草のもとへ。
冬虫夏草に目を輝かせる猫猫。
落ち込む壬氏。
妓楼の主と話はついたものの、どういう口実で猫猫を宮中に戻すかを考えなければならない高順だったーー
完。
漫画薬屋のひとりごと第3巻の感想!
壬氏の正体がほぼ明らかになった!?
第2巻からジワジワと壬氏の正体が浮き彫りになりつつあるところ、今回は
- 阿多妃の息子であること=皇帝の息子であること(似ている&猫猫の推測)
可能性を匂わせる描写がちらほら見られましたね!
特に、阿多妃が後宮を去る前日の夜、城壁から落下した猫猫の下敷きになった壬氏の話。
「呼ばれて酒を飲まされた挙げ句にフラッっと出かけられて、戻ってきたと思ったら、スッキリしたからと追い出された」
そして涙を流している壬氏。
壬氏を好き放題に酒に誘って追い出した相手とは、阿多妃じゃないかと思わせてくれる描写です。
壬氏が猫猫に寄せる好意は絶対的なのに……
壬氏が猫猫に寄せる好意、これはもう絶対的に恋愛に発展するものなのですが、猫猫は全く気づく素振りがありません。
猫猫は壬氏に対して「きれい」「美しい」という認識があっても、感情、とくに恋愛的な好意においては無感情ですね!
まとめ:壬氏の思いは猫猫に伝わるのか?
薬と毒のことにだけときめいている猫猫が、壬氏にときめく時がくるのでしょうか?
客観的に冷静に観察できる猫猫がこの状況を冷静に分析していない点が腑に落ちないといいますか、にぶちんといいますか……やっぱり自分のことはよく分からないってことなのかもしれませんね!
それでは!