人気漫画『薔薇王の葬列』で読者にもなかなか明かされることのなかった主人公リチャードの体に関する謎。性別がどちらなのかについてとともに悪魔の子といわれる理由や境遇について考察をまとめました。(ストーリーの重要なネタバレも含みます)
薔薇王の葬列|リチャードの体・性別は男女どっち?
リチャードの体の特徴について
『薔薇王の葬列』の物語では、主人公リチャードはとにかく「悪魔の子」として忌み嫌われていることが強調されているため、一体何が理由・原因で悪魔の子と蔑みの対象となって母親に執拗に嫌われ呪いをかけられているのかが理解しにくいです。
『薔薇王の葬列』第2話までで判明するリチャードの体の特徴をまとめていくと
- 片目(左目)を隠している(左右で瞳の色が違うことが判明)
- マントで片腕を隠している?(すぐに両腕があることが判明)
- 謎の存在に「あんたは男じゃない」「女でもない」「僕はジャンヌ『君』さ」と言われる(ジャンヌ・ダルクの亡霊?)
- 胸に微かな膨らみがある
- 「このこと」を知っているのは側近のケイツビーと父母、乳母のみ
序盤でリチャードは女性なのに男性のフリをしている、と思われるものの、「だからといって悪魔の子の意味が分からない」…と疑問に思う人も多いのではないでしょうか?
片目の色が違う、生まれた時の不吉な気候現象、もしかすると生まれた生年月日が縁起の悪い日時だった等も考えられますが、リチャードの母親が徹底して忌み嫌う理由としては納得いかない、という声も。
さらに『薔薇王の葬列』のストーリー中盤までは、男装女子なのでは?と思わせるような描写が続きますが、リチャードを女性と思って襲った男が裸を見て戸惑うシーンがあります。
しかし物語が進むにつれてリチャードの体の性別についてはどんどん疑問に思う部分が出てきます。
リチャードの体の性別は男女どちらでもある
結論を先にまとめると、リチャードは両性具有者で、体の性別は「両性」、男性女性両方です。
男性器・女性器の両方が体に備わっています。
BLやアダルトの世界では「ふたなり」ともいわれたりしています。
現代は多様性な社会となったとはいえ、男性か女性かはっきりしない場合や逆転していると見れらた場合に一部差別をする人がいることを考えると、中世ヨーロッパを舞台とした薔薇王の葬列の世界では、両性具有者は男性でも女性でもない=人間ではない=悪魔である=忌み嫌われる存在という価値観だったようです。
リチャードの正体・心の性別はどっち?
リチャードは自分の身体が男性でもあり女性でもあるために母親から蔑みを受けてしまいます。
母親に愛されたいという思いとともに母親の悪夢をずっと見ているリチャード。
しかし父親であるヨーク公はリチャードを我が子として接してきたようです。
さらに幼少期は両性具有とはいえパッと見た限り男の子と認識されやすいことも考慮されたのか、両親の意向で兄弟たち(兄たち)にもリチャードの秘密(両性具有)を隠し、周囲にも「男」として扱われてきた様子が物語から伺えます。
環境も男の子として扱われていたこと、さらにリチャードの中ではどんどん父親の役に立ちたいという思いが強まり、心の性別とともに行動も男性であろうと日々の鍛錬とともに男として振る舞っていました。
なので物心ついた時からリチャード自身はずっと心は男であろうと立ち振る舞っていました。
とはいえ、成長とともに上半身、胸の膨らみが出てきたり悪夢に悩まされることで「自分は一体何なのか?」という奥深い悩みと、男性としての思い、女性としての思いが交錯したり時に大きく自分自身を押し込めて闇落ちしたりと、ずっと葛藤が続く状態になっています。
ジャンヌ・ダルクの亡霊が言い放った通り、実際のリチャードは心も「男でもあり女でもある」状態です。
リチャードが女性性を受け入れたことで悪夢は止んだ
リチャードはヨーク公の息子・男としてずっと生きてきましたが、体を通じて心の女性性を受け入れたことで、悪夢を見ることなく眠りにつけるようになりました。
ずっと呪われていた自分自身の体と境遇でしたが、自分の体を受け入れてくれる人の存在のおかげでようやくリチャードも自分自身の全てを受け入れられるようになった兆しが「悪夢が止む」だったのではと考えられます。
これまで表向きでも男性性を押し通していた分、今まで抑えていた女性性の開放は大きな反動としてリチャードにとっては心地よいものでもあったのかもしれません。
薔薇王の葬列|リチャードの正体と悪魔の子の考察
薔薇王の葬列の主人公リチャードは「悪魔の子」として特に母親から忌み嫌われていましたが、なぜあそこまで我が子を憎む呪うことができるのか?悪魔の子について考察するとともにリチャードの正体についても考察します。
普通以外は忌み子とされる世界・時代
科学などの知識はもちろん、価値観は宗教の教えが絶対で男尊女卑だった中世ヨーロッパの時代・世界が『薔薇王の葬列』の設定になっています。
そのため、普通ではない赤子、しかも男・女両方の器官を持った子供が生まれたら「忌み子」…悪魔の子として扱われて当然の世の中と見受けられます。
また悪魔の子を産んだ女性にもあらぬ疑いや批判などをされる可能性も存分にあるような世界であることを考えると、リチャードの母親が一切の母性を見せることなく「悪魔の子」と罵る心情になるのも不思議ではないのかもしれません。先に2人の普通の男の子を産んでいればなおのことでしょう。
周囲の目も、ヨーク公の正妻として2人の男子を産んでいることもあり、3人目だけが異常となると両親よりも、「何か悪魔の仕業で悪魔の子が生まれたのでは?」という思考だったのかもしれません。
自己肯定できないリチャード
幼少期の環境だったり、母親はじめ保護者や大人など周囲の人たちの接し方・愛情等は、人格形成において大きく影響するとも言われています。
リチャードが悪夢に悩まされて自分自身が不安定なのも、母親の呪い・憎しみが大きく影響しているといえます。
一番欲しかった母親の愛情が望めないどころか恨まれている環境、さらに自分の身体が普通ではない不安定さは精神の不安定さにも直結します。
唯一の救いだったのが父親ヨーク公の存在。母親が全く愛情がなかった分、父親の存在は大きく、リチャードがヨーク公に傾倒していくのも当然の成り行きでした。
リチャードのお腹(下腹部)の傷・火傷跡は何?
原作でリチャードが男性・女性どちらかが明確にされていない段階で、リチャードのお腹・下腹部が顕になった描写がありました。
リチャードが負傷し森に迷い込んだ時に偶然にもヘンリーと出会い、大樹の躯の中のようなところで一晩を明かします。
その際にヘンリーがリチャードのお腹を見た際に、まるで傷や火傷跡または不気味な痣のような描写があるのですが、その一コマは「リチャードが刺された傷口を薬草で手当した状態」。傷口に直接薬草を貼り付けたために血糊や薬草の汁でベトベトになって身体に薬草が張り付きっぱなしの様子のため、火傷痕や痣などではないです。
母親自身が「悪魔の子」として忌み嫌う理由
それにしても時代の影響があったとはいえ、リチャードの母親は実子に対してあまりにも「悪魔の子」として母性を一切見せずに罵りまくるころに違和感しかなかいのですが…最終回が近づき、衝撃の事実が判明します。
リチャードは不貞の子で、父親ヨーク公とは血の繋がりがありませんでした。
母親が一時の寂しさ・気の迷いから関係を持ってしまった男と行為に及び授かった子だったため、まるで自分の罪が具現化した両性具有のリチャードをひどく嫌悪していたと考えられます。
リチャードの母親自身が不貞を働いた「悪魔」だったからこそ、自分自身の罪の象徴であるリチャードを愛することができなかったのでしょう。
さらにヨーク公の実子ではないリチャードがヨーク家の後を継ぐということは、正当なヨーク家の正当な血筋が途絶えることになることを母親だけが知っているためにリチャードが死ぬことを望んだり、王の座から引きずり下ろそうとするような行動に走っていたことも合点がいきます。